遺伝形式:常染色体優性遺伝

分子遺伝学的基盤:不明

【臨床診断】
基準1および基準2および基準3

基準1:全身関節過可動(Generalized Joint Hypermobility:GJH)
Beightonスコア:思春期前では6以上、思春期男性および50までの女性では5以上、50歳以上では4以上

基準2:以下の症状(A~C)を2つ以上
AおよびB
AおよびC
BおよびC
AおよびBおよびC

症状A:より全身的な結合組織疾患を示す系統的症状群(合計5項目が必須)

  1. 通常ではない柔らかさを持った、または、ベルベット状の皮膚
  2. 軽度の皮膚過伸展性
  3. 説明のつかない皮膚線条、例えば青春期(思春期?成人期)、男性または思春期前の女性、における背部、鼠径部、大腿部、乳房および/または腹部の広い線条や赤い線条のようなもの(明らかな体脂肪や体重の増加や減少に関する病歴・自然歴・経過がない)。
  4. 踵における両側の圧迫性丘疹。
  5. 反復性または多発性の腹壁ヘルニア(臍、鼠径、すね等)。
  6. 2か所以上の萎縮性瘢痕があるが、古典型EDSに見られるような真に紙のような、および/または、血鉄素様の瘢痕はない。
  7. 病的肥満、あるいは、他の背景となる医学的状態の病歴がない状況での、小児、男性、出産経験のない女性における骨盤臓器脱、直腸脱、および/または、子宮脱。
  8. 歯の叢生、および、高くまたは狭い口蓋。
  9. 以下の1つ以上の所見で示されるくも状指、(i) 両側の手首サイン(Steinbergサイン)陽性、(ii) 両側の親指サイン(Walkerサイン)陽性。
  10. 腕の長さ(arm span)/身長比≧1.05。
  11. 厳密な心エコー基準に基づく軽度以上の僧帽弁逸脱。
  12. Z-スコア>+2の大動脈基部拡張。

症状B:本診断基準を独立に満たす1人以上の一度近親者の罹患を伴う家族歴

症状C:筋骨格系の合併症(少なくとも1項目が必須)

  1. 毎日繰り返され、最低3か月以上持続する、2つ以上の四肢筋骨格系の疼痛。
  2. 3か月以上持続する慢性で広範囲な疼痛。
  3. 外傷のない状態での関節脱臼の反復、または、明らかな関節の不安定さ(aまたはb)。
    1. 同一関節における3回以上の非外傷性脱臼、または、2つの異なる関節において異なる時に生じた2回以上の非外傷性脱臼。
    2. 外傷とは無関係な2つ以上の部位における、医学的に確定した関節不安定性。

基準3:以下全ての項目を満たす。

  1. 異常な皮膚脆弱性がないこと。あれば、他病型を考慮する。
  2. 自己免疫性リウマチ性疾患を含め、他の先天性または後天性の結合組織疾患を否定すること。後天性の結合組織疾患(ループス、リウマチ性関節炎など)の患者において、過可動型EDSも持っているとの診断をするには基準2の症状Aと症状Bを必要とする。この場合、基準2の症状C(慢性疼痛および/または不安定性)は数えられない。
  3. 筋緊張低下および/または結合組織弛緩による関節過可動性をも含む鑑別診断を除外すること。例えば、神経筋疾患(ミオパチー型EDS、ベツレム型ミオパチーなど)、他の遺伝性結合組織疾患(他のEDS病型、ロイス・ディーツ症候群、マルファン症候群など)、および骨系統疾患(骨形成不全症など)など。これらの疾患の除外は、経過、身体所見、および/または、分子遺伝学的検査に基づく。

コメント:
過可動型EDSにおいて、他にも多くの症状がみられるが、その大部分は、診断基準に取り入れるには感度・特異度ともに十分でない。こうした症状には、睡眠障害、起立性低血圧(起立性調節障害)、機能性胃腸疾患、自律神経失調症、不安、うつなどが含まれる。これらの症状は、関節症状よりも、身体の衰弱を来たしうるものであり、しばしば機能性や生活の質を障害し、患者を見出した際に確認すべきものである。これらの症状は診断基準には含まれないが、それら系統的症状があれば過可動型EDSの鑑別を急ぎ考慮すべきである。今後の研究により、こうした症状と過可動型EDSとの関係を検証すること、サブグループまたはサブ表現型として記載していくこと、そして、過可動型EDSの症状に対するエビデンスに基づくマネジメントを確立することが必要である。