EDSの国際標準となる新しい型分類

2017年3月にEDSの国際標準となる新しい型分類が EDSのInternational Consortiumにより発表されました。
その概要について、信州大学医学部附属病院 遺伝子医療研究センター 古庄知己先生から 情報をいただきましたのでご紹介いたします。
1.現在の型分類からの主な変更内容

・現在の7分類(新型の古庄型を含む)から、13分類に増えました。

 主な型の新しい分類
  (現在の分類)            (新しい分類) 
    ・古典型     → ・古典型 Classical EDS (cEDS)
 ・血管型     → ・血管型 Vascular EDS (vEDS)
 ・関節型           → ・過可動型 Hypermobile EDS (hEDS)
 ・関節型(テネイシン欠損)  →   ・類古典型 Classical-like EDS (clEDS)
 ・新型(古庄型)     → ・筋拘縮型 Musculocontractural EDS (mcEDS)

・関節過可動型の一つである テネイシン欠損よるものが、類古典型として単独の分類となりました。
・新型(古庄型)が筋拘縮型として新しく分類されました。
・関節過可動型以外の全ての型で、コラーゲン及び原因遺伝子が明確化されています。

・古典型の確定診断は、遺伝子診断によるものとされています。
・関節型は、臨床診断の基準が明確化されました。
 (主な内容)
   ・原因となるコラーゲン及び遺伝子は不明。
   ・下記の臨床による診断基準を適用。
     診断基準 1. 全身の関節過可動(Beightonスコアによる判定)
     診断基準 2. 以下のA-Cから2つ以上に該当。
      A. 一般的な結合組織症状(12の項目中5項目以上に該当)
      B. 家族歴
      C.筋骨格系の合併症(少なくとも1項目が必須)
     診断基準 3. 他の必要条件
         *上記の新しい診断基準を適用することにより、現行の診断基準からより客観的で明確な内容となります。

治療法

古典型における皮膚、関節のトラブルに対しては、激しい運動を控えることやサポーターを装着するなどの予防が有用である。
 皮膚裂傷に対しては、慎重な縫合を要する。
 関節可動性亢進型においては、関節を保護するリハビリテーションや補装具の使用、また疼痛緩和のための鎮痛薬の投与を行う。
 血管型においては、定期的な動脈病変のスクリーニングおよびトラブル発症時の慎重な評価と治療(できる限り保存的に、進行性の場合には血管内治療を考慮)、また最近β遮断薬(セリプロロール)の有効性が報告された。
腸管破裂の発症時には、迅速な手術が必要である。
【参考】難病情報センターホームページ 難治性疾患研究班情報(研究奨励分野)エーラスダンロス症候群(平成23年度)

関節可動亢進型 【 過剰運動 <hypermobility> 症候群 】
疼痛管理が重要であり、理学的療法や装具や心理的なサポートも重要である。
リウマチ性疾患と症状が類似することがあるが、リウマチ性疾患への治療、外科的治療は無効である。
【参考】難病情報センターホームページ 難治性疾患研究班情報(研究奨励分野)過剰運動<hypermobility>症候群(平成23年度)

診療科と予後

EDSの症状や経過についての情報は少しずつ集積しつつあります。
根本的な治療は研究段階ですが、おきやすい症状を知り、医療機関と連携をとって、丁寧に検診、治療を行っていくことが勧めます。

症状により、整形外科、循環器科、皮膚科などに複数の診療科・病院を受診することがあります。
そのため、お子様であれば小児科(総合病院の慢性疾患外来や小児病院の遺伝科外来)、成人の方であれば大学病院など総合病院の総合診療科や遺伝子診療部・遺伝診療科でコーディネートしてもらうとよいでしょう。
遺伝形式は、病型によって異なりますので、家族計画に関する相談は、個別に丁寧に対応する必要があります(それには、「遺伝カウンセリング」という診療サービスがあります)。

 得られる社会資源を活用しましょう。
お子様ですと、小児慢性特定疾患の申請ができます。成人の特定疾患(いわゆる難病)には指定されましたが、中々認定されにくい状況です。また、障害の程度により身体障害者手帳などの申請ができることがあります。

 この病気の認知度はまだ高いとはいえませんが、症状の予防や早期発見への努力、根本的治療への基礎的研究も、少しずつ進んでおります。
大切なことは、ご自身の体質の特徴をよく理解され、信頼できる医療機関と連携し、ともに学びながら、丁寧に検診、救急時の対応などの計画を立てていくことです。 

・なお、新しい型分類や診断基準は、日本国内の各医療機関ですぐに適用されるものではありません。
・医療機関への周知や対応など課題も多いと思われ、現場で混乱が起きない様に慎重に対応することが必要となります。
・患者会としては、新基準の導入について研究班や厚労省の動きなど状況を把握しながら、情報発信を行い、対応を考えていきたいと思います。

病型名略語遺伝形式遺伝学的基盤タンパク質
古典型EDS
Classical EDS
cEDSAD大多数:COL5A1, COL5A2
稀:COL1A1
c.934C>T, p.Arg312Cys
Ⅴ型コラーゲン
Ⅰ型コラーゲン
類古典型EDS
Classical-like EDS
clEDSARTNXBテネイシンXB
心臓弁型EDS
Cardiac-valvular EDS
cvEDSARCOL1A2
COL1A2のNMDを来す変異が両アリルに存在、Ⅰ型プロコラーゲンα2鎖の欠損
Ⅰ型コラーゲン
血管型EDS
Vascular EDS
vEDSAD大多数:COL3A1
稀:COL1A1
c.934C>T, p.Arg312Cys
c.1720C>T, p.Arg574Cys
c.3227C>T, p,Arg1093Cys
Ⅰ型コラーゲン
関節過可動型EDS
Hypermobility EDS
hEDSAD不明不明
多発関節弛緩型EDS
Arthrochalasis EDS
aEDSADCOL1A1, COL1A2Ⅰ型コラーゲン
皮膚脆弱型EDS
Dermatosparaxis EDS
dEDSARADAMTS2ADAMTS-2
後側彎型EDS
Kyphoscoliosis EDS
kEDSARPLOD1
FKBP14
LH1
FKBP14?
脆弱角膜症候群
Brittle Cornea syndrome
BCSARZNF469
PRDM5
ZNF469
PRDM5
脊椎異形成型EDS
Spondylodysplastic EDS
spEDSARB4GALT7
B4GALT6
SLC39A13
β4GalT7
β4GalT6
ZIP13
筋拘縮型EDS
Musculocontractural EDS
mcEDSARCHST14
DSE
D4ST1
DSE
ミオパチー型EDS
Myopathic EDS
mEDSADまたはARCOL12A1ⅩⅡ型コラーゲン
歯周型EDS
Periodontal EDS
pEDSADC1R C1SC1r C1s